はるか春日

 堀様は、結構複雑で、今もって、(わたくしが)分かっていない。したがって、ここでは記すことは難しいが、駒込吉祥寺の丹後守(直寄)も、また、丹波守も傍系であり、本流は別にあった。例えば、秀政(ひでまさ)というと、信長、秀吉に就いて、活躍した武将である。それは、さておき、としておく。
 文京区春日(かすが)の名づけというのは、家光の乳母、のちの春日局(かすのつぼね)に由来するとのことであるが、直寄の方、つまり傍系のお殿様に局(おつぼね)の姪を配偶者としたという関係があるということだけは解った。
 12日に駒込吉祥寺から始まったブロ旅は、結局、春日に戻ることになった。どうしても、と、すでに書いたが、「えんま地蔵さん」にという気もちが強かった。正式には浄土宗常光山向西院源覚寺「こんにゃくえんま」様といい、いわれは、眼を患った老婆が大好きな「こんにゃく」を断って、お祈りをしていたところ、えんま様が身(眼)代わりとなってくださって、片目を失い、お婆さんの眼は回復したことから、と、門前にある商店街(えんま商盛会)のサイトに紹介されている。[えんま商盛会のHP
 この日は、奥でもってご葬儀が行なわれていたこと、また、お参りの方がいらしたこともあり、10分程度でお暇したが、お堂前には、眼癒しを祈願した、さまざまな「こんにゃく」が供されている。また、こんにゃくは、眼ばかりでなく、「困厄」(KON−YAKU)から逃れるという意味もあると、前記サイトにあった。地蔵さまもいらっしゃって、「塩地蔵」といい、まさに塩まみれのお地蔵さんで、傍(はた)からみていると、なんだか苦しそうである。歯痛にご利益があるというので、皆、詣でて、お地蔵さんに塩をかけていくものだから、塩まみれ、治ったあかつきには倍にして、お礼をするものだから、塩まみれ×2。たまたま、願懸けされていた方はお地蔵さんのお塩を備え付けの小さな杓でもって掬い、ご自身の頬あたりに擦りつけていらした。歯を塩で揉むと歯茎が締まって、丈夫になると聞くし、実際に、塩味の歯磨き粉もある。この頃(お地蔵さんは寛永以前にすでにあったという)にはもう、そういう理論(塩で歯を磨く習慣)が根づいていた。消毒、殺菌効果という点では、経験則的な理に適った「お手当て」だったのであろうか。しかも、寛永時代には塩以外の成分を有す歯磨き粉を朝鮮半島からの渡来者に教わって、作って(販売して)いたという記録もあるそうだ。このことは、また、いずれ。
 ふと、年数回煩っている、わたくしの口内炎による腫れ( ^)o(^ )にも効くものかと、思ったが、混雑していて(といっても、お二方であるが、さして広い場所ではない)、あきらめた。
 えんま様といい、お地蔵さまといい、身代わりになったり、塩まみれになったり、と、ずいぶん、献身的で、頭が下がる思いである。
 
 帰りがけに梅をと、みると、一本だけみつけた。

[こんにゃくえんまさんの梅]
えんま梅画像0030

 気になっていたので、また、途中の立ち呑み屋さんを我慢したせいもあり、あるいは、塩地蔵さんを観たばかりなので、口腔および咽喉周りが渇いてしまったので、「えんまや」さんに寄った。5時過ぎか、まだ、ほかにお客さんがいなかったが、わたくしが呑みだして、ほどなく、ぱらぱら、そして、30分もすると、団体さんやらが二階席に上がっていき、日暮れも近づいたとあって、どうやら、ご盛況のようである。ここで、「アブラゲ」のねぎみそ焼きをいただきながら、憶えているうちにと、本日のできごとをメモしていた。突き出しが鷹の爪(歯痛に効く)入りで、甘辛くした「こんにゃく炊き」というのも、偶然にしては、できすぎ、という想いになった。まだ、気に懸かることがたくさんあって、二たび、と、メグロから始まったブロ旅はいちおう、終わりとする。

[えんまやさん]※お箸袋、お店のカウンターにて
えんまやさん画像0009

 はるか春日山(越後)。
 長尾・上杉氏ゆかりの此のお城に秀政の嫡男、秀治(ひではる)は移るが、お堀の本流がよみがえることはなかった。