味ゃな呑み屋

 町田での所用を終えたのち、お相手と呑んだ。変なお店で、ビルの地階にあって、自動ドアを潜ると、右と左に分かれている。右側に店員さんがいらしたので尋ねると、右と左ではお店が違うと言う。「どっちがイイの?」と、(私はコッチの人間だから)「コッチ」と⇒を指す。それを信じて、コッチへ。寿司屋さんであるのだが、カウンターには物が置かれていて、ほとんど機能しておらず、個室へ案内された。量が多くて参ったけれど、旨しくいただいた。が、お店を出てもまだ、その構造が分からず、味よりそちらの方に気をとられていて、もう3ヶ月ほど前のことであるが、いまだにとられている。
 
→コッチ(個室が数ケあって、寿司割烹風)
あいうえお2
←アッチ(個割の座敷もあるが、居酒屋風)

 トイレは右側(コッチ)領域にあって、左のお客さんもそこを利用している。これだけでは分かりづらいと思うが、二世代住宅のような造りで、コッチはじぃ、ばぁ、アッチはママ・パパとでも言えばよいのであろうか、想像では右(コッチ)と左(アッチ)は親と子が別々に切り盛りしているのではないかという構造にある。いまだに不思議で、できれば、もう一度うかがって、今度はアッチで呑んでみようかと思っている。名前もシャレていて、例えると「ABC」(→こっち)(DE)「FGI」(←アッチ)といった具合か、いつになるか分からないが、再訪してみよう。
 数年前か、ある温泉街でカウンターだけの小さな居酒屋に入った時のことである。途中、トイレの場所を尋ねて、その方向に。と、その先に今までまどろんでいた雰囲気と全く異なる照明の暗さが眩しく、´所用´を済ませて、ご主人に事情をお聴きすると、アッチ(スナック)が本家(奥様)で、コッチは分家、お体を悪くして、一時お仕事ができなかった際に、じゃぁ、居酒屋でもやったらということで、今がある。(広さは五分の一ぐらいだったか)
 ?ヤドカリ?居酒屋だと仰言るので、そのヤドカリの宿を借りて呑んでいますと、ほかに誰もいず、時々様子を伺いにいらっしゃる、本家の奥様に二人でもって気を遣いながら、遅くまで呑んだ。
 それより以前、神戸の知り合いを訪ねた際、連れて行かれたバーは午前零時の鐘とともにカウンターのママさんがオジさんに変わった。聞くとアカの他人らしい。友人は知っていたようで、隣りでニヤリとしている。それ(カウンター内交代)でもってメニューや価格はというと、ほとんど変わらず引き継いでいる様子であった。ただ、もう決して若くないオッサン3人がゐるというあまり(まったく)美しくない光景のみがアフターシンデレラタイムに澱んでいた。

 この裏表あるいは右左商いはこれからも増えていくものと思う。二毛作というのがある。例えばお昼にランチ、今度は帰りに来てくださいねぇ、と、まんまと釣られた方も少なくないだろう。昼にお蕎麦屋さんでソバをすすって、ではと、会社帰りに一杯呑みながら二たびススっているのは二期作である。基本的にお蕎麦屋さんのメニューは昼も夜も変わらない。(夜限定というお品もあるけれど)
 シェアリングという謂い方とも似ているだろう。ルームシェアリング、カーシェアリングワークシェアリング・・・など、味ゃな話が二毛にも三毛にもなってしまうが、もともとシェアリングしてきたはずの社会であるが、いつの間にかその比率が偏向して、貧富の差は広がるばかり、そろそろ富のシェアリングをしてはどうだろうか。と、年に一度プレゼントシェアリングをしているサンタさんに代わって。 by sewingpattern