マー欠ット
日用的にお世話になっている魚屋さんが35年の節目を迎える。来週半ばで閉じる。わたくしは5年ほどの通いであり、ふだんは「(お勘定)お願いします」「○○円です」という会話以外では、お互いの顔を今日も見合えたねという確認程度のお付き合いでしかない。意地を張っているわけではないが、他のスーパーなどへは?極力?行かずに、そこで買うようにしている。もちろん、品が良いという理由がある。
一ヶ月ほど前、廃業を知り、以来、帰り際に一言二言交わす仲になった。
「まだ、続けたい気持ちもあるけどねぇ〜、一度切れた(已めようと思った)から、もう、ちょっとねぇ」
次々、退いていった八百屋、肉屋を兼ねるようになって、お魚の面積は半分になった。
周辺には高齢者が多く住んでおり、徒歩5分以内にあるこのお店は彼らにとっての命綱であった。だから、足腰の弱った彼らにかわって、奥さんが自転車で宅配をするようにもなった。
「心配でねぇ、、、」
と、まだ続けたい理由はそこにある。とはいえ、ご主人も失礼だが高齢者のお一人である。
「孫がねぇ、女の子、女の子、女の子、で、男、男」、もう魚を捌くより、お孫さんとゆったり過ごす年端でもある。
「寂しくなるけど、ご苦労様でした。」
所用があるから、もう、寄れないかもしれない。そう思って、声をかけさせていただいた。
この10店舗ほどのマーケットには酒屋、薬局だけが欠片のように残るのみである。
氣の所為か、今年初めて蝉の声を聴いた。