琵琶湖、沖島

 そう記してはなんであるが、日頃、湖の島に気を留めているわけではない。むしろ、海に浮かぶ方(島)へ眼はいっている。ヴォーリズ記念館という当てに外れて、思案した。すでに八幡堀付近を歩くことだけは決めて、宿も取っておいた。そのような中で、気を留めていない湖上に留めてみた。
 それが、ヲきの島である。(拙ブロ09年4月3日付)
 沖島が只今の名である。
 琵琶湖には4つの島(他に人工島ひとつ)があり、もっとも大きく、また唯一住民がいらっしゃるのが沖島である。現住所は近江八幡市であり、琵琶湖岸「堀切港」から10数分の連絡船で向かう。ほかに、長命寺港からも一便だけ連絡がある。いつもはチェックアウトぎりぎりまでぐずぐずしているが、その日ばかりはバス便と船便に間に合うよう早目に宿を出た。近江八幡駅前の観光物産協会による案内所で事前にネットで得ていた情報を改めて確認すると、時間までバス停前の喫茶店でお茶を。レジ周りのごちゃごちゃとした物の置き方が、なにか、落ち着かないようでいて、また、その落ち着きのなさ加減を見ていると、なんだか落ち着くような雰囲気のお店であった。あとで、わたくしと同じ長細い八幡地図(案内所で入手できる)を持った方が入ってきて、ああ、同好なのかなぁと、やはりというか、のちほど八幡堀でおみかけした。

八幡駅からバスで、のんびり]

堀切港

[堀切港から小船で、のんびり]

渡しの時刻画像0203

 バスにも何人か八幡への旅人が乗っていらしたが、皆さん途中で降りられて、堀切港でのわたくしが最後の乗客であった。晴れているから、沖島が目の前に座しているのが鮮やかである。ただ、存外、船は混んでいる。もちろん、島の方々もいらっしゃるが、多くはわたくしと同じく島旅者である。

沖島遠景]※分かりづらいが右下のあたり

堀切港から沖島1画像0212

 おそらく、島内には車はない。走行できるような道もなさそうであるし、だいいち、この島には似合わない。アシは船である。皆、対岸にマイカーを駐めて、必要があれば、街場にでかけていると聞いた。
 島では、かわりに、うしろにカゴを載せた三輪自転車が大活躍している。

[港に着いた荷やお子様を乗せて、ご帰宅]

島には車はない画像0207

 車同様、これといったお店もない。どこかで、お食事でもなどと考える方が間違っている。もちろん、まったく、ないわけではないが、不定期営業である。
 とにかく、この島では何かしようではなく、何もしないがよいのである。

[魚網?ポンポン?]

魚網画像0204

 色とりどりの魚網をみながら、あてもなく、狭い道をとぼとぼと歩く。左(島)は小さな畑と家並みそして、すぐに高くはないが山が迫っている。右は湖である。今、わたくしは東南をめざしていることになる。道はそこにしかないので、仕方ないことであるが、一歩、奥へ入ると、他人さまのお宅である。うっかりすると、不法侵入になるので、気をつけながら、公道を進んでいる。途中、島の少年が竿を垂らしているので、釣果を尋(き)いてみると、「ナニモ」と、素っ気ない。
 そう、彼も釣りが目的ではない、きっと、ただ、垂らしているのだと。邪魔をして、ごめんね。

 今は7人で、4月から二人増えるんですよ

 同じ船で来られた方が小学校の職員さんらしい人に尋ねているのを耳にした。念のため、同校のHPを確認すると、昨年(平成20年度)10人であったが、6年生(3人)が卒えて、新たに1年生2人が加わったということになるのだろうか。今年は6年生がいないから、来春はお別れの涙を流さなくてすむ。

沖島小学校]

小学校画像0206

 沖島小学校のサイトにクイズがあり、わたくしの記述と若干異なっている(年度の違いなど)。クルマは2台あるとも。また、琵琶湖には島が三つあると記されているが、おそらく沖の白石を除いているのであろう。(クイズの問題ページに)

 もう、ここから先に暮らしの匂いはない。

 戻りかけて、ちょっと、横道、暮らしの中へ入っていた。不法かもしれないが、誰も咎めない。軒先をぶつけ合うように家屋が建っていて、細い路地が何本も走っている。漁に出かけているのだろうか、人の気配は少ないが、暮らしの香りが充ちている。

 船の時間まで、港前の漁協事務所・倉庫でまどろんでいた。

 何か食べるものはないかしらね

 という女性客のわがままに、家にでも帰られたのだろうか、戻った折の両手にちらしすしを抱えていらした。

 団子もあるから、と、餅も焼いてあげている。

 その様子を横目にしながら、わたくしはというと、湖面を撥ねる光の中に、少し前(昔)の沖島を探していた。

(つづく)