せむ

 去り行く夏のいちとき、いちひきの蝉と過ごした。開け放しの部屋だから、これまでもあったけれども、勝手に飛びこんできた。もっとも、元気はない、これまで“の”も、そうであったように。
[来る蝉、往く蝉]
せむ
 せめて、この澱んだ空気の中ではなく、土、風、光を感じながらと思い、追い出した“の”を責むことは誰にもできないのではと思う。
 おそらく、秋に少しでも部屋の掃除をすれば、いくばくかの亡き骸をみるのであろう。だから、掃除はできない。
 時おり使っているバスの運行が別会社に移譲された。もっとも、まったく関係のない会社へではないけれども、書き方は悪いが、大きい会社から小さい会社へと追いやられた。もともと、乗客が多い路線ではないので、採算が悪かったのであろう。ただし、利用者には良いこともあった。これまで利用していた区間の料金が50円も安くなる(均一制ではない)。小さい方(会社)が小回りに優れている。
[来るバス、往くバス]
消えゆくバス停生まれるバス停

 秋逼む