もっけのさいわい

 ある会話中に、とびだした死語(作日は4・5)である。
 ・・・・・どういう意味か?
 と問われて、沈黙した。
 もっけ、のことである。
 戻り、辞書を開くと、
 ・・・・・もっけのさいわい【勿怪の幸】とあり、思いもよらないさいわい、とある。「新明解古語辞典」(監修;金田一京助氏、編者代表;金田一春彦氏)のもっけのページを捲ると、もっけ【物怪・勿怪】とあり、思いがけないこと、意外、とあった。「最新詳解古語」(編;佐藤定義氏)には、以下のとおりある。
 ?不吉なこと。災害、異変。
 ?思いがけないこと。予期しないこと。意外。
 ?(「もっけのさいわい」の略で)思いがけないしあわせ。
 どうやら、物の怪(気)〜もののけ、と、同じようである。2日に、神田淡路町の「幽霊」坂を歩いたが、こちらにも親(ちか)しい存在であるが、両者は明確ではないものの、異なっているのでもあろうか。例えば、お岩さん、お菊さん、あるいは、アカーキイ・アカーキエヴィチは幽霊なのか、ゲゲゲの鬼太郎に登場するファミリー(ヌリカベさんとか;水木しげるの妖怪ワールドより)やコバリョーフの鼻は物の怪なのか、あるいは、ドラえもんは・・・となると、もう、よく分からない。
 「菅江真澄」(著;田口昌樹氏)に修験者(山伏)によって、秋田はじめ東北に普まった「番楽(ばんがく)」という芸能の記述がある。同著によると、神楽、権現舞あるいは能楽とも呼ばれるとあり、例えば、秋田県指定無形民俗文化財にもなっている根子(阿仁町)、仁井田(旧十文字町)、本海(旧鳥海町)などに、残り、継がれている(秋田県サイトより)。山伏といえば、山形県であるが、もちろん、番楽もあるが、ここでは、黒川能という別系統の農民による能楽がある。うっかりしていたが、この3月に東京公演があったらしいが、まったく、知り損ない、見損なった(金山の番楽も同時に行われていたようである)。[山形の芸能at国立劇場より]※すでに終了している
 今、ながめている菅江真澄の描画(スケッチ)は秋田県五城目町の番楽面(めん)である。サイト(五城目町の番楽面/秋田河川国道事務所より)でみつけた「お面」は、いずれも物の怪ぽいが、真澄のほうには、幽霊ぽいのもある。もちろん、わたくしの勝手な判断であり、やはり、双者を分けることはむずかしいのであろう。
 ただし、もっけのさいわいとは、気もち的には、もっけ<さいわい、ということなのであるが、それでは、もっけに申しわけない。もっけ≒さいわい、あるいは、もっけ>さいわい、ということもあるのではないだろうか。