耐空性改善命令(AD)の、お詫びと補足

 8月24日に拙ブロ、それが「怖い」で標題についてふれた。ただ、情報の確認作業が不足していて、間違いがあった。そこのところを含めて、補足したい。<(_ _)>
 まず、わたくしがブログを書いた経緯を整理すると、
?事故発生(幸い、大きな事故にならずに、よかった)

?朝日コム情報で、05年12月及び06年3月にFAA(連邦航空局)より当該機種(ボーイング373−800、700)に対するADが発行されたという記事を見る

?上記情報をもとに、日本のCAB(国土交通省航空局)のTCD(耐空性改善通報)を確認するが、当該月付近に該当機種に関する通報が見当たらなかった

(ということから、わたくしは)
?ADが発行されているにもかかわらず、TCDが出ていなかった、と思い、そう書いた。この時点で、ADを眺めておけばよかった、と反省するが、あとのまつりである。

[耐空性改善通報TCD−7152−2007]
TCD7152--2007.png
または、※耐空性改善通報発行状況(平成19年度)の8月20〜24日をクリック

 さて、TCDは、23日に発行されたとも書いたが、その時点で、通報に準拠ADがないことに気づいていた。CABの担当者もよほどあわてていたのだろうかと、素人考えをしていた。(参考に、翌日のTCDも載せた。24日分には準拠AD〈※SBも〉の記載がある。また、2通の発行日と発効日を見較べてみると、あわてぶり=危急(緊急)性の違いが分かるような気もする。)本日、改めて、FAAのAD情報をみた。機種別に履歴が表示されているので、《737−800》関連を開いた。※直接、いけないので、左フレームの「By Make」から、《Boeing Company, The》に、そして、737−800 Seriesへ。(なお、737−300、737−300Cもほぼ同様のようである)情報は、新しい方から出てくるので、最初に「8月25日発行」の今回の事故に関するADがある(28日時点)。タイトルは、「Main Slat Track Downstop Assembly
 先の「TCD−7152−2007」における概要《メイン・スラット・トラックのダウンストップ取付部のナット(以下「ダウンストップ・ナット」という。)が外れることにより、トラック・カンが損傷し、燃料タンクから燃料が漏洩する不具合防止》を指しているのであろう。「ASCの勉強部屋」にあるように必ずしもAD⇒TCDという手順ではないというから、今回のように、TCD⇒ADということもありうるのであろうが、ADは同時に緊急を意味するEmergencyが付記されているけれども、事故が起きてから緊急はないだろうとも思う。もちろん、事故防止のため、ADであろうと、TCDであろうと、改めて発行・発効することは必要ではあろう。
 話が前後するが、05年と06年のADについて、先のAD履歴書によって、確認すると、以下の2項があった。ただし、06年3月に該当するADはなかった。
AD;2005−25−03
Effective Date ;12/21/2005
Subject;Point ”D” splice  fitting
AD;2005−23−16
E.D.;12/21/2005
Sub;Center fuel tank
 上記2ADと今回の事故との関連については、わたくしにはさっぱり分からない。
 シカゴ条約というのがあるらしく、ADについても、ふれられている。日本ビジネス航空協会JBAA)という組織があって、シカゴ条約に関する資料を引用させていただく。
シカゴ条約とICAO ANNEX》(2005/3/18)
日本ビジネス航空協会、協賛;日本航空技術協会
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《ANNEX ? Airworthiness(続き)》PDF26頁
4. 耐空性が継続される要件:
⇒航空機の登録国は以下を含む航空機の耐空性が継続される要件を定める。
a)改修、修理、あるいは部品の取外し取付けに関する耐空性継続の要件。
b)Annex6 Operation Of Aircraft に定める整備要件(整備要目やAD の実施など)。
⇒上述の耐空性が継続される要件を満足している場合、航空機の登録国は耐空性の継続を認める。
5. 耐空性の継続に必要な情報:
⇒航空機の登録国は運航における耐空性に係わる重要な不具合や、経験が報告される体制を確立し、そこでの情報を設計国に報せる。
⇒設計国はこの情報に基づくものを含め、耐空性の継続と安全運航に必須な情報(改修、検査、整備要目の変更、運用限界や操作方法の変更など)を航空機の登録国に伝える。
⇒航空機の登録国は独自に、あるいは設計国の情報に基づき、必要な処置を講じる(ADの発行など)
 このことについては、国土交通省航空局の「第3回航空輸送安全対策委員会」(資料3)『世界的な安全対策の動向⇒9頁』(平成17年7月28日/国土交通省航空局)にも記載がある。
[シカゴ条約に基づく国際的枠組み(第8附属書第2部第4章)]
20070828174626.png
 これらを総覧していると、では、一体、どこが、仕切っているのか、誰が親(航空機機材の安全性=耐空性などをみ護る責任者)なのか、よく分からない。じっと、眺めていると、「登録国」が親なのかという気もするが、じっくり見ると設計国ともとれる。具体的には示されていないが、航空機メーカーおよびキャリア(航空会社および関連する整備会社など)にも「親」の分を求めている臭いがぷんぷんしている。そもそも、SB(註1)はメーカーの自主的情報公開(提供)であり、拘束力がないし、ADも日本国内では効力がなく、初めてTCDの発行により、発効の意味がある(らしい)。そのくせ、ADを耐空性改善命令といいながら、TCDを耐空性改善通報というのも、何だか、やはり、これも怖い。そして、よく調べないと、わたくしのような思い違いをする、これも、やはり、怖い。

 (註1)SB;SERVICE BULLETIN(サービス・ブリテン)のことで、メーカーが発行するものです。法的拘束力はありませんが、命が惜しかったら実施した方がいいでしょう。でも、軽微で推奨に止まるものから、緊急度・重要度の高いものまで、内容はいろいろあります。(ASCの勉強部屋より)

 長くなったけれども何故、こんなことを書いているのか、わたくし自身にも、よく分からない。ただし、おそらく、この先、航空機を利用することもあろう、しかし、そのたびに、ADやTCDを確認することはなく、時間や予算に合わせて選ぶことになろう、こっちの方が、現実的なこととして、年金問題より、やはり怖い。そのような想いが、あれこれと不安および諦めとして、飛び交っている。ただ、それだけのことである。<(_ _)>