それが「怖い」

 何故、日本国内の航空機事故(その所有者は中国台北中華台北または台湾の会社である)に米国の機関が乗り出したのか、とっても不思議であったけれども、なんとなく、合点がいった。要するに、「ボーイング機」自体になんらかの不具合があったという記事が載っていた。※朝日コム(07年8月23日)この記事に出てくる「耐空性改善命令」(AD)については、ASCの勉強部屋というサイトの記述を引用させていただくと、
 [ADはAirworthiness  Directive(エアワーシネス・ダイレクティブ)のことで、アメリカ連邦航空局(FAA)やその他の国の民間(註;ママ)航空局が発行する耐空性改善命令です。TM(注)もADも外国政府の発行するものですから日本での法的拘束力はありませんが、実施しないと命に関わります]とある。
(注)TM;TECHNISCHE MITTEILUNG(テヒニッシェ・ミッタイルンク)の略でドイツ連邦航空局(LBA)が発行する耐空性改善命令のこと。(同サイト)
 このADに基づいて(準拠)して通常は、各国の航空局などが発行するのが日本においては、TCD(耐空性改善通報、注)と呼ばれるものであるらしい。
(注)TCD(TECHNICAL CIRCULAR DIRECTIVE)とは国土交通省航空局(CAB)が発行する「耐空性改善通報」のことで、航空機や航空機に搭載する機器の耐空性に問題が発生した場合に(ようするに欠陥のあることが分かった場合に)、その対応策として指示されるもので、強制力があります。(ASCの勉強部屋より)
 今回の事故については航空機の所有者が国外機であるため、当該国のTCDにあたる通報が発行されていたかどうか、また、それへの航空会社の対応が問題になるのであろうが、どういうわけか、日本の航空局も事故後の23日にTCDを発行しているという(「福井新聞オンライン」)。先の朝日記事による06年3月(あるいは05年12月末)のAD通達時においては発行していないということになるのであろうか。
 ちなみに、国土交通省航空局のサイトで最新の耐空性改善通報発行状況(07年8月13〜17日分)には以下のTCDがあった。残念ながら、翌週(18日以降)の記録はまだ掲載されていない。
《TCD番号7150 − −2007
発行日08/17 発効日08/22
種類/プロペラ 
準拠AD/EASA AD 2007−0223−E
適用型式/ダウティ・プロペラーズ式R408/6−123−F/17型プロペラを装備した航空機
概要/リーディング・エッジ・ガードがプロペラから剥離することにより、機体の損傷又は人員の負傷が発生する不具合防止
参照SB等/ダウティ・プロペラーズ・アラート・サービス・ブレティンNo.D8400−61−A69(注)
(注)SB;SERVICE BULLETIN(サービス・ブリテン)のことで、メーカーが発行するものです。法的拘束力はありませんが、命が惜しかったら実施した方がいいでしょう。でも、軽微で推奨に止まるものから、緊急度・重要度の高いものまで、内容はいろいろあります。(ASCの勉強部屋より)
 また、過去15年間の通報(CAB)という資料をみると、件の機(ボーイング737−800型及び700型も該当する)についても、かなりの数のTSU−HO(TCD)が出ている。これらが、1週間後に各航空会社に届いたのかどうかは分からないけれども、通常、郵送で、通報が届くのに1週間かかるという、怖ろしいことになっている。[耐空性改善通報は、適用航空機の所有者(所有者から依頼があった場合には使用者または整備担当者)に対して配布いたしますが、緊急のものを除き郵送により配布するため、所有者の手元に届くまでに、発行日から1週間程度かかります。]※国土交通省航空局耐空性改善通報発行状況にある冒頭のコメント
 06年3月に出されたADという情報(朝日コム)をもとに、同月のTCDの中から、今回と同型機関連を探してみた。3月14日に「TCD番号6811 − −2006」というのがあって、その内容(概要)は『昇降舵の制御が失われることにより、機体の操縦性が低下する不具合防止』とある。このことが今回の事故と関連するのかどうかは、わたくしには分からないけれども、素人考えで書けば、ADとTCDの間に、ほとんど違いはないようにも思えるのだが、1年半近いタイムラグ(AD→TCD)といい、郵送といい、そこが怖い。(※05年の12月近辺も当たったけれども、それらしいTCDはなかった。)
 「白い恋人」事件に照らせば、製造したものの、「あ、ちょっと、賞味期限を直(改竄)しておいて、で、安全性については問題性が少ないとされているのにもかかわらず、×(販売停止・売場からの撤去)になったけれども、航空機の場合、そうはならず、「販売(使用)してもよいけれど、ちょっと、直しておいて」という命令(AD)があったにもかかわらず、(緊急性を感じなかったのであろうか)TCDとはならず、だから、国内航空会社も適切な対応をしていない(ADには強制力がないから)。また、当時、仮に、それが発行されていたとしても、おそらく(緊急とは思わないから)「郵送」になったのであろう。
 「それが怖い」

※23日、耐空性改善通報TCD−7152−2007が発行されたようである。夕刻、確認すると、CABの新着情報としてUPされていた。