獣脂(じゅう・し)

 なんとも「はっと」とさせられる言葉である。とはいえ、全く関わりのないことでもないので、本日は少し、考えてみたいと思う。標題の獣脂とは、豚、家禽(鶏など)、牛、羊、山羊などの脂肪分をさすようで、例えば、ラードと聞けばピンと来る。財務省の「貿易統計」、平成18年12月分を見ている。上記、分類にかかる輸入総量は「その他の牛、羊又はやぎの脂肪」が約6500トン、一方、輸出はというと、わずかに豚脂1.8トン(豚)とある。こと食品などについては輸入超過国であるのだから、この数字も不思議ではない。ついでに、統計表のすぐ下にある項目も確かめてみたが、輸入の類にある「鯨油」については記載がなく(輸入実績がない)、輸出にいたっては、単独での項目すらなく、あ〜あ、もう、〜ねぇ、と思わざるを得ないけれども、鯨蝋も含め、鯨さんにとってみれば身も皮も脂も、もしかしたら、心も、一切合財奪い取られてきた歴史でもある。奪い取る側の、わたくしにとっては、給食時代を含め、ずいぶん、搾取しているけれども、その主な理由は、コッチが貧乏なので、鯨肉などが安価であったことが大助かり、ということであったからだと思う。そういう時代から、ずいぶん経って、乱獲もたたって、(少しだけど)反省もし、今では、コッチの事情はあまり変わっていないが、鯨は高嶺となってしまった。で、最近のことであるが、安価な居酒屋チェーン店に行った際に、メニュー上には、刺身に、サラシに、竜田揚げに・・・と(注文もした→食べた)、まるで、×十年前に戻ったような気分にもなったが、後日、調査捕鯨の費用捻出のため、鯨肉の販売を促進するというようなネット記事を以前見たことを思い出し、改めて、サイトを覘いてみた。財団法人・日本鯨類研究所という。(以下、鯨研)常勤役員3名のうち、2名が所管官庁である農林水産省水産庁)がらみ、残る1人は、鯨研が調査のために使用している日新丸ほかを保有し、航行代理業務を受託し、おまけに、最近までは調査捕鯨によって得られた捕獲調査副産物(鯨さん)を独占的に買取、販売していた共同船舶株式会社の元役員という、まことに”不可”思議な組織でもある。トップページを見ると、いきなり、赤い文字が躍っており、これは、何かアジテーションのようなそういう調子でもって、とても、調査研究を行なっているような雰囲気が感じられない。それはともかくとして、サイト内に平成17年度 事業報告書(財務諸表含む)というのがあって、その11ページあたりを読むと、(鯨肉などの)販売量は増えているものの、より一層の販路拡大を図るために新たな会社を設立して、学校や外食産業などへ売り込んでいる・・・とある(かなり要約しているけれど)。もしかしたら、上記、居酒屋も、この営業の成果なのであろうか。この先、調査費用を増やしたい→販売を拡大→費用は増えて、調査捕鯨が拡がる・・・という繰り返しを行なっていくつもりなのだろうか?第一、国策事業がどうして、国家予算で賄えないのだろうか、複雑な事情でも、おありなのであろう。今は、もう、鯨を積極的に食べようという意識は薄れている、わたくしであるが(先日食べたが)、みなさんはどうだろうか?何のための調査なのか、今後、鯨肉を国民食として復活させるつもりなのであろうか、鯨研の設立目的だけでは、何もわからない。
『設立の目的は鯨類その他の海産哺乳類の試験研究、調査及び関連する国際情勢の調査等を行い、水産資源の適切な管理と利用に寄与することである。』
 鯨研の一方的な紹介ではバランスが良くないので、グリーンピースジャパンのHPも見てみよう。過日の日新丸の火災に関わるコメントが出ているけれど、海難があった場合、思想なり考え方が一緒であろうが、異なろうが、あるいは敵も味方もなく、救助するのが一般的だと思っていたけれど、そうでもないらしい。双方とも、冷たい?潮風にでもあたって、頭を冷やした方が良いのでは、と書くのは失礼にあたるか。
 捕鯨の技術は、稲作と同じように、徐福(海の道、海への道、拙ブロ05年10月9日付)が伝えたともいわれている。童男童女3千人、五穀と百工を乗せた(載せた)という大船団であったが、捕獲した鯨は航海上、貴重な食料、燃料などにもなったのであろう。その時代と現在を比べても致し方ないことではあるけれど、その当時ほど、鯨さんに頼らなくても、とも思う。
数え歌はひとまず御終い。