宵越しの月

 昨夜はなかった、お月様を見あげた。ただし、午後6時過ぎのことゆえに、蒼白い表情が、まだ眠たそうで、問うても、わたくしに耽るようには仰言られなかった。月を詠むと、どうも悲しくなっていけない。

 『ゆくへなく月に心のすみすみて果てはいかにかならんとすらん』(西行

 もしかしたら、あの蒼白い表情は、昨晩、呑みすぎた、お月様だったのかと、だから、昨夜はお姿を御見せにならなかったのかと、許しも得ずに勝手に耽っている。

『はりまがた灘のみ沖にこぎいでてあたり思はぬをながめん』(西行)を、

《はりまがた灘のみ沖にこぎいでてあたり思はぬ朝陽をながめん》と置き換えたら、駄作であるうえに、ずいぶんと、五月蠅くなる。