火の国、通りすがりの記?(くろがわ・黒川)・(ぃ)

 瀬の本峠というのは、およそ九州という概念から外れた土地であり、通りすがった、その日もまた、氷点下の世界を目の当たりして、樹氷っぽい現象もあって、乗客の中から思わず歓声も。横断バスの中では通過していく風景を時々ナレーションで説明してくださって、民謡なども流れてくる。それによると、この峠は900メートル程度らしい、他の資料などではキリがよいのか千メートルという表示が多いが、この際バス説を信じよう。別府から由布院バスターミナルを経て、黒川温泉、阿蘇駅、熊本空港、そして、熊本駅を結ぶバスは九州産業交通(産交バス)の時刻表によると日に5本運行されている。ただし、わたくしが乗った9時47分由布院発には昼食付、遊覧付とあるが、この時期は、そうでもないらしい。バスのニックネームは「くじゅう」と「あそ」、いずれも九州では高峰である九重山阿蘇山ネーミングライツのもとである。ただし、どちらも「山」と呼ぶこともあるが、単一の、例えば富士山、九州でいえば昨日から今朝にかけて通り過ぎてきた由布岳(頂上付近は双つに割れているけれど)のように独立した単座式ではなく、いくつもの山が連なって座している。もっとも高いのは、くじゅう、では中岳(なかだけ)1791m、あそ、では高岳(たかだけ)1592m、沖縄の於茂登岳(おもとだけ;525m)に比べれば3倍ほど高いけれど、本州には20数座も3000m級があることを思えば、「たいした」高さではないのだけれども、東の豊後、西の肥後、それぞれの平坦な地から見上げる山相は、同じく真っ平らな関東平野筑波山をみるような威風堂々としたものなのであろう。
 黒川というのは、数分の休憩をとったあと、峠を発ち、やまなみハイウェイを離れて、数キロさらに奥に進んだ田の原川沿いに、比較的、緩慢に30軒ほどの宿が散らばっている。ほかに満願寺、田の原、小田などの離れ湯を含めて黒川温泉と総称することもあるそうだ。バスは狭隘な温泉街には、はいりきらず、降りた客は国道脇の停留所に放り出される。予め、宿が決まっている方は所定の迎えがやってきて、すすっと街に向かっていくのだが、わたくしのような日帰り組には、その術がない。地図といっても、サイトから刷り出した、まったく大雑把な類しかもっておらず、といって、バス停の待合室付近に案内となるような表示もない。・・・と、防犯パトロール車と白いボディに表記されたワンボックスカーが近づいてきて、迎えは来るんですかと聞かれ、わたくしの宙ぶらんりんな状態をお伝えすると、では、温泉組合事務所まで、行きましょうと仰言って、同類お二方と三人、先客にご挨拶をして、乗り合わせた。帰り道は件の事務所から歩いたが10分強、車であれば5分もかからない距離ではあるけれど、行きはヨイヨイ帰りは・・・の逆ではあるけれど、交通弱者に対して地方は依然として冷たい、氷点下の中、歩いた帰り途で、自分の体力の減退をあわせ、考えたことである。(それはそれとして)所用で訪れた、あるお宿で図々しくも、お風呂に入れてください、と甘え、「うちのお湯でよかったら、どうぞ、お入りください」と快く、露天のある場所まで連れていってくださって、まだ、誰も利用していない更衣室のストーブに暖を入れて下さって、わたしはこれから出かけますので、と、ごゆっくりと、忙しく、もときた宿の中へと向かっていかれたので、わたくしは、お礼もそこそこに、心は、お風呂に。6畳あまりの脱衣所を、せわしなく、抜け出して、外へ。
[手前の露天風呂、まず、ここで寒さに慣れる]
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 ↑は飛びだした目の前にある屋根付き露天風呂(東屋風)で、ここで、まず、慣らし運転。それでも外気は冷たく、昨夜の由布院の比ではない。そろそろという頃合を見計らって、第二の、本当の露天、吹きさらしの中、街に着いてから降ったりやんだりの雪が、また、激しくなってきた頃に、ご主人から、滑らないよう、注意を促されていたので、温まった身体も、元に戻って、細かく震わせながら、慎重に雪道を下り、↓へ向かう。
[川面にある本当の露天、吹きさらし、一応屋根付き]
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 川沿いに風が走り、雪をつれてくるので、視界がぼやけているが、負けずに進んで、第二に跳び込む。もちろん、数秒後には心地よい温かさが全身に伝わってくる思いで、しばらく長湯を決めこんでいると、頭部の違和感に気づき、手をかざすと、頭髪⇒凍髪状態に、お行儀の悪いことであるが、頭ごと湯の中に浸けるしか術がなかった。
 函館の「湯の川ブログ」ではあまり自慢できなかったので、黒川(地元の方=宿のご主人だけではあるが、クロガワと濁る。軽井沢を「かるいさわ」というようなものであろうか)ブログではその分も含めて書いている。予定を変えて、次もKUROGAWA風呂ぐを書くことにしよう。(この項続く)