楽しく音楽を聴けていない♪ゴメンナサイ

 バルバラとジャック・ブレルを聴いていたのは、レコード盤の時代、何度も繰り返して針を置いたり、揚げたりしているうちに、盤自体に、ざぁざざぁっと、これはもう、わたくしの不注意でしかないけれど、傷をつけた結果の「雑」音が雑じって、それはそれで、また、素的に聴きこんでいた記憶が蘇った、そういうことを想いおこしてくれたことは、たいへんしあわせだと思った。その頃のわたくしは、フランス語の感触が聴き心地よく、何故か地方都市なのにシャンソン喫茶があって、入ってみると、それは、もう、開店直後の店主の心意気をわずかに看板に残しているだけで、中では有線か何かの雑多な曲が流れていて、失望したことがある。初めて、買ったバルバラが「黒い鷲」というアルバムであった。その頃、偶然知った、私鉄の高架下にある喫茶店に買ったばかりの盤をもっていき、店主に聴きたいのですが、と、図々しく申し出たのであるが、快く、フォーク専門のライブ喫茶にバルバラが流れた。ジャック・ブレルもそうであったが、店主は、いい曲だねと、バルバラのときのように誉めてくれた。(他にお客さんはいなかったけれど)ブレルは、ベルギー生まれのシャンソン歌手ということに興味があって、購入した。アルバムのタイトルは、ダ・ムステルダム(アムステルダム)、やはり、同名の曲が印象的であったし、十何年かが経って、世に出たイングリッシュマン・イン・ニューヨークを聴いたとき、ブレルのことを思い出した。パリにも、ブラッセルにも、行ったが、とうとう、アムステルダムを訪ねなかったのは、ブレルの所為、いまだに、そう思っている。10代終わり頃の、とても、楽しく音楽を聴いているとはいえない、そういう思いが、『楽しい音楽を聴く♪』さんに励まされたのであろうか、かえって楽しく感じている。ありがとう。
 もちろん、ブラート・オクジャヴァやウラジミール・ヴィソーツキーを知ったのは、そのあとのことである。