暗誦番号

 最近困っていることである。金融機関のキャッシュカードにある4ケタ(****)だけの時代から較べると、今は暗証番号やパスワードを都度、要求される時代である。ネットバンキングに、交通機関、宿泊施設の予約に、また、今、目の前にあるパソコンにさえ、ログインする際に「どうぞ」とばかり、要求される(ま、わたくし自身が設定したのではあるけれど)。暗証番号の類はまるきり本人と関わりのない数字などを設定することは事実上不可能である、したがって、多少なりとも関係のありそうな、(本人ではなく、周りの)誕生日とか、好きな数字(ラッキーナンバー)などをもって設定する。中には、ご親切にも、忘れた際のQ&Aまであったりして、例えば、好きな食べ物、行きたい国、といった質問が出され、適当に?答えを入力する。しかし、好きな、とか、行きたいなどという事柄は、残念ながら、状況(時間経過)によって、変わることもあるだろうから、入力時に「イチゴケーキ」だったものが、数ヶ月たつと、「メンタイタラコ」になっていることもあるので、思わず、「メンタイ・・・」と入れても、(パソコンの)向こう側は入力者の好みの変化まで察知していないだろうから、冷たく「不正解」と判断して、受け付けてくれないのだろう。そういう(番号などを失念する)事態を招かないようにと、わざわざ、暗証番号やパスワードをメモ帳か何かに記録して、保存しておこうとするが、これも万が一、「盗まれては」と、保存時にパスワードをかけたりして、その管理のために、さらにメモ帳を・・・という、なんとも変な状況に陥っている。(ちなみに、上記好みは、わたくしのではない)
 ITという世界は、まことに本人確認を必要とするところであり、それは構造上、いたし方がないことなのかもしれない。翻って、実世界では、わたくしたちは、本人を確認できる正式(法的)な術をもっていない。わたくしは、自動車免許というものを一度もとったことがないので、過去には、何か本人を証明する際に、免許証をと言われても、ありませんと答えるしかなった。と、相手は「・・・、困りましたねぇ」という顔をされるけれど、ないものはないし、第一、免許証が自分確認になるのであれば、パスポートでも、と思ったけれど、以前は、それがダメであった。本来、日本国旅券というものは海外にいてこそ威力を発揮するものであって、国内では何の意味もない、そういう類のことを言われたこともある。(国外でもたいした威力は発揮しないと思うけれど)確かに、旅券というものはそういう性格のものなので、わたくしには返す言葉がなかったと記憶している。今は、そうでもないらしい。新しい口座をこさえる時もパスポートでOKらしい、最近、新設した口座はたまたま外資系の銀行だったからかとも思ったけれど、それも違うらしい。そればかりか、例えば、健康保険証や年金手帳などの「写真なし」のモノでもOKらしく、実感としては、以前より、本人確認の条件が「ゆるく」なっているようにも思える。仮に、全く縁も所縁もない場所を訪れた際に「自分が自分であることを、どう証明できるのか」、もし、その術をもっていらっしゃる方がいたら、お知らせしてほしい。だから、といって、国民総背番号制を採りいれよ、などといったことは考えたくない。自分(本人)であるかどうかを、証明するということは、(必要であるかどうかは別として)、かなり難易度の高いことではないかとも思う。第一、旅先で、自分がナニモノであるかなどということは、たいした意味をもたないはずであるので、自分が自分である証明など、必要ないのかもしれない。
 さて、宿や列車の確保、カードや銀行の資金(というほどのものではないけれど)のチェック、日々、番号を暗誦しているつもりであるが、打ち込んではみたものの、必ず不安になって、カード現物の刻字を確認したり、何重にもガードしたパスワードメモ帳を何枚(ファイル)も開いて、番号が間違っていないかどうか、調べたりしている。わたくしだけでも、上記****以外に、※凹※■※α※、△▼K0むにゃむにゃ、などといった、あまたの本人確認の「術」をもっており、もう、こうなると、どれが、本当の本人なのか、本人にさえ、分からない。
[はやわかり本人確認法(金融庁)]
http://www.fsa.go.jp/honninkakunin/00.pdf