恵方(えほう)

 朝から雪が断続的に降っている。コロコロと乾いた雪なので、気にはならない。傘をさす人もほとんどいない、地下鉄の、あるいはビルの入口で着衣に付いたのを掃う人もいない。たちまち、身から離れてしまう、潔い雪だ。
 札幌の中心街は意外と狭い、泊まっているホテル近くの中島公園、すすき野、大通り(公園)、さっぽろ駅と、地下鉄(南北線)は通っているものの、歩き出したら、こんな雪の中でも、そう遠くは感じない。もともと、開拓民が苦労して、一条一丁づつ築きあげて来たのだろうから、限界というものもあろう、国家的大事業である京都のそれとは、かなり異なっている。調べてみると、京都の一条(京都御所南、通称丸太町通り)から八条(京都駅南)まで約4kmに対し、札幌の北六条(札幌駅)〜南九条(中島公園北)までは2km弱である。条間の距離は京都500m、札幌140mで、後者の方はかなりコンパクトで、歩いていても、目まぐるしく条が変わっていく。歩行時速4kmとしても駅からホテルまで30分程度、今日のような雪の中で多少ノロノロするにしても、散策としては適度な距離である。また、京都同様、碁盤の目状なので、わたくしのような方向音痴でも比較的迷わずに歩くことができるし、仮にそうなったとしても、大通り公園に建つ札幌テレビ塔や最近できたタワー(駅ビル)が目印として、大いに助けてくれる。ただ、今日のように雪混じりでは塔もタワーも見えず、時折、条と丁の番号表示を探しながら、自分の位置を確かめる始末である。(下写真の中央、樹の下あたりにヌボ〜としているのがテレビ塔
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 迷い道のついでにデパートの地下食品売場をのぞくと、もう、その場で、お酒を呑みたくなるような魚が沢山あって、困ってしまう。ふと、見ると、行列ができているので、近づいていくと、そこは太巻きずしの販売コーナーであった。十年ほど前になるか、大阪に行った際に、関西では節分に太巻きずしを食べる風習があると初めて知ったが、今ではたいそう全国的になったのか、北都でも人気を博しているようだ。
 恵方は、その年の吉とされる方角(そこに幸福の神がいるそうだ)だそうで、あるコンビニ(ここでも売っている)のHPによると、今年は西南西がそれに当たるらしい。この方角に向いて、おすしを無言で丸かぶりする、(幸福の神と)縁を切ってしまうから、決して切ってはいけないらしい、普段、そういう所作は禁じられている紳士淑女もこの日ばかりは、丸のまま…と思ったら、先ほどのコンビニではミニというのも売っている。これなら、少々、お上品に食べられるかもしれない。
 すでにデパ地下のおすしは売り切れが近づいており、今から並んでも買えないと諦め、ちょうど、デパートから見ると、ホテルが恵方に当たるので、せめて、無言で帰ろうと、そろそろ客引きが出始めたススキノ界隈を凍った雪で足をとられないよう気を留めながら、少し早足で通り抜けてきた。
雪まつりの準備も佳境)
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