もう限界です(MO.LIMITED)

 しばしば乗っている常磐線の車窓に「金町(かなまち)」という駅があり、そこに「金町とうきゅう」がある。東急ストアというのはおおむね東急沿線を中心とした西側にあるという予断があるものだから、最初は意外に思った。降りて、買物をしたこともある。何度か遠く(列車内)から眺めているうちに、このお店が23区内における東、あるいは北限なのかと考えだし、気になっていた。ようやく、その調べモノを行なった。まず、東急ストアのサイトより店舗検索、次に東京都を。「とうきゅう」と「東急ストア」及びフードステーション、プレッセがあるが、後2者は別として、前2者の一覧は同じであるようで、五十音順に並んでいる。(※とうきゅうとストアの違いは良く分かっていない)
 もちろん、(23区の)西側に多いので、東や北にありそうな店舗を眼で追ってみる。そして、ライバルとなりそうなお店に見当をつけた。まず、一之江東急ストアに気づいた。例によって電子地図を開いて、一本線を心の中(想像)で描きながら競合わせてみた。

 結果は金町の負け。

 ◆金町とうきゅう/E139度52分24秒8/N35度46分2秒5
 ◆一之江東急ストア/E139度52分39秒1/N35度40分50秒9
 
 それではと、北に賭けた。

 金町、2敗目。

 ◆高島平とうきゅう/E139度40分9秒2/35度47分14秒7

 なんとも中途半端な想いである。

 (二敗を喫した)そのお店をみるたびに、限界集落ということが過(よ)ぎる。この言葉の意味は下記が分かりやすい。

 《「限界集落」という用語については、必ずしも明確な定義が確立しているとはいえないが、代表的なものとして、大野晃氏(北見工業大学教授、高知大学名誉教授)による以下の定義がある。
 『65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状態に置かれている集落』》
「平成17 年度限界集落における集落機能の実態等に関する調査報告書」
(財団法人農村開発企画委員会)より引用

 現在社会の立場から視ると、田役、道役といった言葉(慣習)自体がおとぎ話(限界用語)のような面もあるが、前半の65歳以上については、高齢者をその年齢で区切ってよいものかという課題はあるものの、現実社会にはそれに近い存在があり、必ずしも過疎地域だけのことではない。

 例えば、「とうきゅう」の北限(23区における)である高島平(団地)が、そう云われている。

[高島平の高齢者比率]

 ◆高島平(1〜9丁目)/18.8%(65歳以上人口比率) 
   ◆2丁目/23.9%
   ◆3丁目/26.8%
 ◆東京23区/18.5%
 ◆全国/20.1%

 上記は2005(平成17)年国勢調査による。この2・3丁目に72年より造られた高島平団地が在る。確かに高い、ちなみに二つの町丁目を除いた高島平(1・4〜9)の高齢者比率は14.4%と23区平均よりも低いのだから、やはり、高い。

 「日本の将来推計人口」(06年12月推計:国立社会保障・人口問題研究所)によれば、2045年に65歳以上人口比率が国全体で4割に達するという数字もある。これは、そのあと十数年程度、推計線を下方に垂らせば、日本という国そのものが限界集落(国家)になることをあらわしている。(※65歳で区切ってよいのかどうかは措く)

 明確な定義はないということであるから、単純に市町村単位でふってみた。以下は、高齢者比率(くどいけれど、65歳以上)が50%を超えている町村である。(05年国勢調査による)

 群馬県南牧村/53.43%
 三重県紀和町/53.42%(05年11月1日消滅)
 福島県昭和村/52.39%
 福島県金山町/51.76%
 山梨県芦川村/51.82%(06年8月1日消滅)
 高知県大豊町/50.76%

 平成の大合併は比較的若い世代が住む「市」などに老いた村を吸収させるという方法でもって、これ(高齢化比率)を薄めているという作為があって、実際には限界集落(町村)が増えているのにもかかわらず、意図的に、消滅させているフシもある。

 喜多方というのは、若松に平日滞在、週末帰りを半年ほど続けたことがあるのに、とうとう訪ねることがなかった、わたくしにとっては痛悔の里である。06年1月4日に喜多方市熱塩加納村、塩川町、山都町高郷村と合わさった。05年国勢調査の数値を示す(合併前最後の村町市別データ)。

 村町市名/高齢者比率/←小数点四捨五入/人口占有率

 熱塩加納村/33.2%/33%/6%
 塩川町/25.9%/26%/18%
 山都町/38.9%/39%/7%
 高郷村/34.7%/35%/4%
(旧)喜多方市/28.7%/29%/65%
(新)喜多方市/29.4%/29%/100%

 わざわざ、四捨五入(数字の真ん中)したのは旧と新の喜多方市では高齢者比率が変わっていないという希釈の例を示したかったからである。そもそも65%を占めている「市」に村と町が呑みこまれているのだから当たりまえである。

 でも、国全体の比率はごまかす(希釈する)ことはできない。

 国家の限界については、近々(希釈して、いずれ)。