消えた「わたくし」

 駅構内での荷物検査は何事もなかったけれども、仮に、何かがあった場合、その先は「わたくし」という物体の存在証明を行なう必要がある。しかし、今はわたくしを証明する手立てが何もないことが困りものなのである。これまで、幾度と自身を証明する憂き目に遭っているが、その都度、先ず求められるのが、顔写真が添付されている運転免許証である。わたくしにはない。全人口(16歳以上)の3割のひとりである。(交通安全白書/平成20年版より)
 「困りましたねぇ」といわれても、免許をもつ義務は確かないはずなので、困りましたねぇと返すしかない。そのような場合、代替案として、旅券(パスポート)を差し出すことがある。おおむね、それで困りましたねぇとお互いが嘆息する必要がなくなる。10年前に更新した旅券は結局、そういうことにだけ使用して、昨月、その効力を失った。
 
 [本来目的では未使用の旅券]

使わなかったパスポート

 しかし、厳密に言えば、旅券は国外における存在保証のようなもので、国内においてはもともと何の効力をも、もたないはずであった。事実、そういう理屈をこねる人もいた。それが正しいと、わたくしも思った。だから、
 『困りましたね〜』・・・
 その際はどう解決したものか、もう記憶にない。
 クレジットカードの期限が迫っていたので、連絡して、写真付きにして欲しいと依頼した。しかし、これも、細かく言えば、
 『困りましたねぇ』と、きっと、なる。困りましたねぇ〜。

 [名もなき−わたくしが知らないだけのこと−花]

名もなき花∵知らないだけ画像0228