取り違える

 二週間ほど、シャンプーとボディシャンプーを取り、間違えて、使っていたことに、ようやく、気づいた。ニ、三日前から、シャンプーの「ノリ」が悪いと感じていたのである。いくら、風呂嫌いのわたくしでも、頭髪がアブラ塗(まみ)れ状態になるまで、浸かっていないわけではないので、おかしいとは思っていたけれども、(取り違えとは)分からなかった。二つの液は、いずれも100円ショップで求めた容器に入っており、(おそらく)水性インキで記したであろう文字は半分消えかかっていて、僅かに一方にシャンプーと認められる程度で、一体、シャンプーなのか、ボディシャンプーなのか一向に分からない状態である。もちろん、使い分けできるようにと、容器の様は異なっていて、一方はどちらかというとずんぐりむっくりしており、他方はすくっとしている。しかし、どちらが、シャンプーで、ボディシャンプーかを憶えていないため、当てずっぽうで使っていた。強いていえば、浴槽に近いほうがボディではないかと決めてかかり、ソッチをボディとして、手前(浴槽から遠い方)をシャンプーと考えていた。もうこういう状態では、容器に書いた文字も容器自体の様子の違いも、「記号」としての意味を失っていて、わたくしの曖昧さという非・記号的な行為にのみ頼っていたのであるから、取り間違えも致し方がない。また、頭髪もボディの一部(延長線上)と考えれば、どっちであろうと大きな問題ではないし、だいいち、小さい頃は「(洗濯)石〓」イッコですべてを賄っていたのであるから、どうということではない。
 取り違えというのは少なくないことである。したがって、確かめる。料理の最中に、砂糖と塩はよく見極めている。でも、最初に、舐めたほうが塩だったりすると、タイヘンである。食堂なんかでもって、醤油とソースを慎重に選んでいる人もよく見かける。普通、和風ぽい容器に納まっているはずの醤油であるが、お店の方が妙に凝っているのか、モダンな容器で、しかも、ソースと寸分違(たが)わないカタチであったりすると、記号(シール)がないかぎりは、嗅ぐか甞めるかするしか術はない。わたくしのようにソースが大の苦手である場合、嗅ぎ間違って、ソースを甞めたりすると、もう、それだけで、あとの食事が進まない。
 日常的には、わたくしは、靴下を取り違えないよう、よく確認している。すなわち、靴下には靴と同じように右足用と左足用があると信じているのであり、急いで、出かけなくてはいけない時なのに、の〜んびりと左右を確かめている。結局、どっちがどっちかが分からないまま、とりあえず、装着して、あわてて、外に出ている。他所様にお聞きしても、左右があるのかどうかははっきりしない、どうやら、皆、分かっていないのかもしれない。左右の見分け方は、ロゴマークの付着側が外か内かで分かるといった見分け方もあるようだが、では一体、外側なのか、内側なのかという判断は分かれており、やはり、どっちなのか、よく分からないし、双側に付いていたら、どうするのであろうか。
 しかし、どうも、区別はない、いえ、これまではなかったということが、あるサイトから判明した。
 「靴下の左右立体製法」といい、平成18年度彩の国産業技術大賞特別賞を受けている。武田レッグウェアー?といって、
 《足や靴には左右があるのに、靴下には、なぜ左右がなかったんだろう?》
という、なんとも、明解なお答えがあった。やはり、(左右は)なかったのである。これまで、わたくしが、こだわってきたのは、いったい、なんであったのだろうか。考え自体が取り違えというしかない。ただし、どういうところが左右で異なっているのか、さっぱり分かっていない(._.)

 今夜、ずんぐりがシャンプーで、すくっがボディシャンプーであることが、ほぼ判明した。