台風が貫けた(CARRIED OUT)

 水曜日(19日)、所用を終え、雨まじりであったが、「まめや」さんに。3度目(9・1と8に続き)である。前回2度は土曜日であったけれども、「混んでなくて、よかったですよ」とご主人に突っ込まれるほど、わたくしが行った夜はなぜか、ヒマである。あきらかに、わたくしの所為かと、少々、申し訳なくも思っている。もちろん、ご主人の前言にはそのような意味は含まれていないけれども、ゆっくり、お話できるということで、琉球タイムの流れを、流れてくる音曲とともに、楽しませていただいている。最初のオリオンビールを干す頃に、ご主人が、いきなり「阿波連の店、壊されました」と仰言った。わたくしというのは、言葉から想像できる範囲が狭い(貧相だ)から、てっきり、人為的な力でもって、いたずらされた(壊された)と、理解したが、渡嘉敷を訪ねる人が、そういうことはしない、もちろん島民も、と思い直したら、「台風ですよぉ」とご主人。続けて、仰言る。「せめて、向こうにいたらねぇ、防げたのにねぇ」と、昨年まで、台風が襲来するたびに、風のしのびよる前ぶれが、お店のどこかしこにあらわれるので、防禦体制に入るそうで、水道管だか何かがブルブルと震えた時は、奥さんが両手と一切の体重をかけて、押さえている間に、ご主人がワイヤーでもって補強する、そういうことの連続が渡嘉敷の今頃ですと説明してくださった。「(誰もいないから)今度はだめでした」と、ドアを突き破って、風が貫けた。まだ、様子を見ていないので、想像であるけれども、と断って、冷蔵庫とかも飛ばされているかもねぇ、安くないソフトクリーム機もだめかね、と、奥さんに語りかけるような、独り言のような、最後は自然、声も小さくなっていた。
 気象庁の「南西諸島(沖縄地方、奄美地方)への台風接近数(2006年までの確定値と2007年の速報値)」をみると、今年の台風接近数は現在の時点で6、過去56年間(51〜06年)の平均が7.6回であるから、ま、「並」という状況にある。近年では04年に15とあり、この56年の中での最多回数でもある。ちなみに、接近数とは台風の中心が鹿児島県の奄美地方、沖縄県のいずれかの気象官署から300km以内に近づいた場合を示しているけれど、発生数はというと、平均26.6回、04年は29回で最多ではないけれども、接近確率5割以上という、高率であった(平均は28.6%)。05年に何度も那覇に行っていて、「今年は台風が少ない」ということを聞いたが、去年は多かったということの裏返しになるのであろう。沖縄の場合、上陸の数はあまり問題にならない。近づいてくるだけで、もう大事である。特に、渡嘉敷では、島の西側にコースをとる台風が厄介だそうである。本島の東側ルートは、小さい(低い)ながらも(本島の)山々が護ってくれるといい、台風11号はまさに前者であり、9月15日夜半、940(hPa)へクトパスカルを下回る勢いでもって、島に向かっていた。(第二室戸台風925hPa、伊勢湾台風929hPa)
 以前、東京の居酒屋でお会いした青ヶ島の方から聞いたお話を思い出した。台風の風でもって、家財道具が家を飛び出していく=「もっていかれる(bring_off)」(06年12月5日付)という。上記、拙ブロにも書いたけれども、わたくしは伊勢湾台風を経験しているが、どうも事情が島では異なるらしい。台風を経験するのも琉球のうち、ご主人のお言葉に「甘えて」、台風シーズンのうちに、近々、訪ねてみようかと思う。