三重に

 本日は、三重に(さんじゅうに)の話である。わたくしが小さい頃、電器屋さんで「三重テレビが映ります」という広告を見て驚いたことを(その広告の様態、ダンボールか何かに白い紙を貼り付けて、そこそこ上手な手書きであったことも含めて)今でも憶えている。当時の電波状況はいい加減なもので、ほとんどの家庭で画像がぶれたり、画中に同一人物が二重に見えたりするのは当たり前であって、皆、心の中では「はっきり(鮮明に)見たい」という思いが大きかったのではなかろうか。その心理を衝いたアンテナ屋さんのコマーシャルもあった。そういう時分に、さらにひとつ重ねたテレビを売るというのは、どういうことかと思ったのであるけれど、これは三重(さんじゅう)ではなく、三重(みえ)MTVのことであった。
 所用でホテルに泊ることもある。ホテルの客室は自動ロックになっていて、今は、もうあまり話も聞かないけれど、鍵を部屋に置いたまま、出てしまうということが10何年か前はよくあったし、そういう人をよく見かけたことがある(自分も・・・)。さらに、内側にはチェーンロックあるいはスライド式の内鍵があるというのが普通である。わたくしも部屋にいる際には締めておく。また、ドア部には、もうひとつ内鍵が装着(内蔵)されている場合もあり、これをロックすることもできるが、こちらは、あえて〆ない。以前、所用で随伴した際、お知り合いが、それを閉じたまま、部屋を出たことがあり、戻る際、ルームキーをどう回しても、こねてもドアが開かず、わたくし(隣室)にSOSを発してきたので、フロントに連絡を入れ、事情を話し、来ていただいた。ホテル氏によると、「ドア部の内鍵をかけたまま、部屋を出た場合、オートロックが二重に作用し、外側から開けることができなくなる」ということである。なるほど、と、ふたりでもって、納得して、お互いの部屋に戻ることに。わたくしも慌てていたのであろう、部屋鍵を室内に置いたまま飛び出したらしい(ドアは閉まっているし)、結局マスターキーは二度役に立った、ということがあったからである。あれはいつだったか、朝8時前にドア付近が‘がたがちゃ’と騒がしく、あいにく、そのホテルには内鍵が一切なく、がたがちゃさんは易々と室内に入り込んできたらしい、驚いて、目を醒まし、立ちすくんでいる、わたくしを見て、向こうも驚いていたことがある。日頃から、わたくしの就寝時は原則的に下着のみという堕らしなさであり、ホテルにおいても、そうであるため、申し訳ないことをした。こういう場合、やはり、竦んでいるしかない、そのホテルに「三重(さんじゅう)に」を望むしかない。フェイルセーフのことである。これについては、近々、書こうかとも思っているけれども、その原則は「三重に」にあると考えている。また、いずれ。
 さて、ここからは三重(みえ)のことである。県都(政庁)津を訪れると、かならず「うなぎ」を食べることにしている。味噌同様、うなぎのあつらえ方でも出自・素性がある程度分かってしまうのであるけれども、わたくしの場合は、津方式があっている。すなわち、コリカリ、しっかり焼かれていることが(わたくしにとっての)蒲焼の前提条件となっている。「うまっぷ」(PDF2.1MB)は津市観光協会によって発行されている。旧市内を中心に26店のうなぎ屋さんを紹介している。わたくしも、いくか所か、うかがっている。同協会の案内で「津は全国一のうなぎ消費量」とある。少しだけ、調べてみた。(末尾の表参照)釘(あるいは串)を刺すつもりはないけれど、津はそれほど多いというわけでもない。ちなみに00〜06年平均支出額の上位3都市は京都、和歌山、金沢市である。また、圧倒的に東海地方また近畿地方で多くなっており、もちろん、津もいずれかに属しているので、全国的にみれば少ないということではない。ただし、価格差という事情もあろうから、正確には量あるいは頻度(食す回数)で較べる必要があるけれど、残念ながら、家計調査には、そこまでの詳細な公表数値はない。「小売物価統計調査 調査結果」(第1表の(1)をクリック、エクセル表〜これも総務庁統計局)の06年7月をあたってみた。100グラム当たり、京都市825円に対して、津市は468円、やはり安かった。単純に考えれば、津はやはり、うなぎ消費量が多いということになるのかもしれない。(参考;和歌山794円、金沢460円、東京728円)平賀源内の発案以来、どういうわけか、うなぎは7月に年間の1/4が消費されるようになってしまい、また、旬は秋とも冬ともいわれるけれど、わたくし的には、おいしい焼き方さえ満たしていれば、時節にも、あるいは、天然か養殖かにも、一切こだわりはない。もちろん、いただくのは、重ではなく、§丼§でありたい。
 図々しく、今回も「雑食」カテゴリーで書かせていただいた。「食べ物 新日本奇行」は只今、嵐の前の静けさか?、酒宴のほんのとっかかりのおつもりなのか、「お通し(突き出し)」を語っていらっしゃっていて、本番(B1グランプリ)に備えているようである。
[過去7年間のうなぎの蒲焼消費量](png使用)
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「家計調査」(総務省統計局)より作成